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2013(平成25)年度の活動

                                                                         
第七十五回 12月10日(火)参加者15名
テーマ
ユーモア作品について

 硬い話、まじめな話、深刻な話の作品がつづくと、ユーモアのある作品に出合うと心が和むものです。人間の本音、本心を突いていると、思わず笑ってしまいます。納得もさせられます。
 日常生活でなにかと他人を笑わせる、ユーモアの体質を持った人がいます。共通するのは、平気で失敗談や恥部を語れるのが特徴です。文章でもコミカルな笑いの文体を持った人もいます。人間の本音や機微を突いています。
 落語など話術は、訓練すれば人を笑わせることができます。だからと言って、落語を文章にしても、さほど面白くない。それはなぜでしょう。落語や漫才は手ぶり、身ぶり、顔の表情など、からだを使った視覚からの表現の補完があるから、愉快な気持ちになれるのです。
 文章で笑わせるジャンルとしては小話、川柳、ショートショートなどがあります。コツをつかみ、書き慣れてくれば、ちょっとした寸言で、意識的に笑わせることは可能です。しかし、エッセイの場合は、笑いを取る意図的なものは案外つまらないものです。ダジャレの文章は笑わせたつもりでも、読み手には面白くもないし、笑えない。ユーモア作品の訓練としては、平気で、日常生活の失敗、失策を作品化することです。考え違いとか、錯覚とか、思い違いとか、男女の気持ちのすれ違いとか、それらは読み手を愉快な気持ちにさせます。そこにはだれもが共通するおかしみと人間の本質があるからです。
「私は思わず抱腹絶倒した」
 そう書かれても笑えるものではありません。地の文ではなかなか笑えません。活字自体にことばの響きの抑揚がないからです。
 会話文にユーモアがあると、単純でも思わずクスッと笑ってしまうものです。それは読者が頭のなかで、無意識に声を出して読んでいるからです。
『ユーモアの知恵を持っているのは人間だけです』
猿や犬は笑わないのか。その論議は別にしても、ユーモアは作品に厚味がつきます。作者はときには心底から裸になって、ユーモラスな作品にもチャレンジしてみてください。人生の本音の研究、人間探究にもなります。
今月はいつもの金曜日の会場が取れず、火曜日になりました。
ちょうど先生のご都合は火曜日がよいそうで、新年の2月からは、毎月第二火曜日に開催することになりました。
今年最後になった教室終了後、二次会はいつもの居酒屋で忘年会になり、来年も元気で会うことが出来るように乾杯しました。
第七十四回 11月1日(金)参加者13名
テーマ
心に響くエッセイ作品

 エッセイは、書き慣れてくると、卒なく器用にまとめられますが、読み手の心にひびく作品は生れ難くなります。
 作者はつねにマンネリを打破する心がけが大切です。それには「どう書くかよりも、内面の何を書くか」と考える。辛くて、勇気がいる、そういう作品ほど、書き終えると、喜びと充実感を覚えるものです。
 悦びに満ちた素材でも、楽に書かず、苦しんで書いてください。

【現在の作風・執筆姿勢をチェックしてください】

@ 書く前の心構えとして、書きたい素材があっても、すぐに書きださない。それをじっくりあたためる。
「私の何を書くか」を突き詰めていく。
A 素材は切り口しだいで、新しさが生れる。あの角度、この角度、となんども思慮してみる。
こんな見方や考え方もあるのか。こんな生き方の信念や信条があるのか。
 それは切り口しだい。
B 隠したいものを隠さず、飾らず、本音を書く。そこから感動や感激の作品が生まれてくる。これを書いたら、軽蔑されたり、嫌われたり、批判されたりするだろう。そう思う作品ほど、勇気をもって書けば、良い作品である。
C エッセイは自分自身への取材である。矛盾や対立、苦しかった出来事は念入りに取材すれば、読み手の心に響く作品になる
D 多めに書いて、読み返して、スパッと切り捨てていく。そして、推敲に推敲を重ねる。もう、これ以上手直しができない、と思っても、4日、5日寝かせると、直すべき何処はいくつも出てくる。
E 普遍性、共通性を目指す。「人間って、そういうところがあるな」と言わしめる。
F 他人の作品と優劣を争わない。過去の自作との間で優劣を争う。
受講者の作品をテキストにした講義は、今月も続きました。今回は、特に「上手な結末の書き方」を中心に、進められました。
講師の評は、「気合が入ったもの、一歩踏み込んだものもあり読みごたえがあった」ということでした。
先回のきむさんに引き続き、清水文子さんが、「第6回ノースアジア大学文学賞」で「奨励賞」を受賞されました。
おめでとうございます。
第七十三回 10月4日(金)参加者18名
テーマ
作品との距離感と濾過

 日常のいま起きた出来事や、最近体験したことは記憶が鮮明なので、実に書きやすいものです。
 報道記事や報告書ならば、時間を置かない方が、場面がすぐに浮かぶし、より事実に近いところで書けることから、内容がより正確になります。
 しかし、エッセイは逆です。日常生活のなかで、出来事をすぐ書けば、「こんなことがありました」という単なる紹介や報告調になります。器用に、上手く取りまとめたとしても、作品の内容が薄く、大げさな言葉が多く、語彙の使い方が上滑りで、文章の体を為さなかったりするものです。作者自身が裸になって書いた(心を裸にした)作品まで遠く及ばないものです。
 顔見知りの読者ならば、「えっ、そんなことがあったの」と仲間内の出来事として興味を示しても、赤の他人には響かないのが常です。
 人の胸を打つ文章は、そう簡単に書けません。出来事(素材)を最低でも、半年くらいは頭のなかで濾過する時間が必要です。遠い昔のこと、過去の出来事でも、「あれを書こう」とふと思い起こし、それをエッセイの素材に決めてからも同じです。そこを起点として、半年間以上の思慮が必要です。
 それはなぜか。頭の中で、テーマを絞り込み、構成を考える。そして、書き出しはどうするか。心理描写と表現方法に迷う。結末が決まらず、これでは盛り上がりに欠けるだろう、と悩む。頭のなかで、書いては消し、またしても書いては修正する、それをくりかえすことが濾過です 
 読者の心を打つ作品は、作者が作中の「私」を冷たく突き放し、距離感をとる必要があります。「己に厳しく」昇華させると、読者の共感が得られます。
 別紙の16項目の頭脳チェックは半年でも足りないかもしれません。この工程を縮めると、「作者は苦しまず、楽に書いた作品だ」と評されます。
今回から講義内容が変わり、「エッセイの評価点」を各作品ごとに1〜5で評価します。
Aエッセイの基本からの評価 Bテクニカルの面からの評価 C読後感からの評価 D差をつける表現方法 と5項目あり、それがまた細部に分かれて16項目にわたって評価します。
人の作品に点数をつけるのはなかなか難しいことです。
第七十二回 9月6日(金)参加者16名
テーマ
名品の作り方

 エッセイは読んでくれる人が必要だ。身勝手な文章ははた迷惑だ。読んでもらえるサービス精神を忘れてはいけない。
 それには読んでもらえる、材料集めからはじめる。鮮度の良い、興味を引く、目新しい素材が必要になる。ただ、身近な素朴な材料でも、精密に観察すれば、切り口の良い料理(作品)が作れる。
 日々、労を惜しまない、それが文章の腕前になる。

@ テーマを決める
 ・読み手(書き手じゃないよ)が明瞭にワン・センテンスに要約できる。
A 視点は「私」に統一する
 ・主人公は私である。書きやすい他人(ひとごと)は書くな、それが鉄則。
B 構成(ストーリー)を組み立てる
・野球の投球で考える。ストレートにカーブ(ひねり、ジグザグ)も入れてみる。読者(バッター)に、球筋を見破られない。
C 「私」を鮮明に描く。最も難しいけど、読者はそれを読みたい。
 ・きわだった特徴、愛すべき癖、そして、いくつかの欠点
D 場面の設定(三一致の法則)
 ・短い時間、狭い空間、それに筋を一致させる。圧縮するにかぎる。逆は、散漫な作品になる
E 表現は五感を使う。
・文章音痴と、味覚音痴はよく似ている
F 情景、人物の行動、心理描写の三本柱で書く
・理屈で書かない。叙述文ではへ理屈になる。
G  簡素にして明瞭な文章で書く
 ・一度読んだだけでは解らない文章など論外である
H 優れた素材は、表現に凝らない方が作品に味が出る。
・悪文と美文は親戚どうし
I 褒めてくれる人が身近にいるとよい。
 ・料理は誉められるから、腕前が上がる

読者にとって、事件や出来事よりも、最も興味あるのは「作者のあなた」です。70回きたところで、いちど「私」を解析してみましょう。
休みあけのせいか、「楽に書いている」「書きやすい素材を、小手先で書いている」と先生から苦言を頂戴しました。
嬉しいことが二つあります。会員の、きむキョンヒさんの作品『祇園囃子』が、第9回「文芸思潮」エッセイ賞佳作を受賞したこと。もう一つは、A5二段仕様で、347ページの『エッセイ教室72回記念誌』が出来上がったことです。
第七十一回 7月5日(金)参加者18名
テーマ
結末について

 一般読者が作品を手に取って読んでくれるか否か、それは書き出しで決まる。(赤の他人に)最後まで読ませれば、一応の合格点である。作品の評価点はエンディングの数行「結末」で決着する。それだけ、結末は重要である。
 初稿は書き出したら、何でもかんでも最後まで書く。結末まで書く信念と執着心があれば、確実に作品力が挙がってくる。
『途中で、筋書きが変っても良い。どんな着地になるか見通せずとも良い』
 最後まで書く。これが意外に難しかったりする。書く途中で、悩み、発想の軌道修正で、書き直しをする、そのうちに投げ出す。こういう人はいずれ、自信を喪失し、とん挫し、書きたい想いばかりで、作品が創れなくなる。
 どんなエッセイにしろ、結末がなければ、作品の成否の判定ができない。エンディングまで書く体質になれば、時どきの出来ばえに甲乙があっても、長い目で見て、確実に作品力が挙がってくる。
『結末は2稿で練り直せよ』
 これが重要なコツである。初稿は書き出しから苦しんだりするものだが、2稿は割にゆとりを持って直せる。作中の力点を膨らませるとか、冗漫なところは削るとか。構成を組み立て直すとか、この作業で、修正能力すら身につく。

【良い結末とは何だろう】
@ 最後の数行が全体をしっかり受け止めている
A 作者の言いたいテーマが、ラストで凝縮されている。
B 導入部(リード文)と、結末がリンクし、題名とも関わっている。

これを念頭においたテクニックはあるのだろうか。

【結末のテクニック】
@ 初稿は多めに書いておいて、2稿のとき、うしろの数行、数枚を切り棄てる。結末は短めでスパッと終わらせる。書き切っていない。それが読後感になる。
A 結末は説明文でなく、描写文で終わらせる。映画のシーンのように。
B 初稿の結末と書き出しといちど入れ替えてみる。双方が良くなる時がある。
C 結末の文章の推敲をとくに念入りにする。誤字・脱字や難しく読めない漢字があると、読後が悪くなってしまう。
今月の演習は、各人「思い出のミュージアム」を取り出す。そして、その時の印象、忘れがたい想い、学んだこと、いまなお心に焼き付いているものなどを、300字の描写文で書くことだった。それぞれが、音楽堂、博物館、美術館などで出会ったもの、感じたことをまとめた。
第七十回 6月7日(金)参加者17名
テーマ
「光る文章」について

 創作エッセイは、同じ素材、似た内容を取り上げても、書き手の技量によって作品の完成度が違ってきます。
 全体の骨組みがしっかりした作品であることが前提ですが、「きらっと光る文章」が2か所以上あれば、評価の高いエッセイになります。「光る文章」とはなにか。一言で言えば、読者の心を一瞬にしてつかむ、気のきいた文章です。思わず『巧いな』と呟くのが常です。と同時に、読者はくすっと笑ったり、思わず涙したり、ジーンと胸にひびいたり、文章自体が強く印象に残ります。
 もう一つは観察の目が鋭い描写の場合です。「なるほどな」という説得力が織り込まれています。
 このように「光る文章」は文体と観察の2つの面で要約されます。

文章面で光るとは、
@ ふつうは考え付かない、素晴らしい表現がある。
A 独自の想像力が働いた、巧みな言い回しの文がある。
B 何度も書き直し、練り直し、文を磨いた切れ味の良さがある。

観察の面で、光るとは、
@ 人間の言動の一瞬を巧くつかまえている。
A 対象物が正確なぴたり見合った言葉で書かれている。
B 丹念に観察したうえで、限りなく短い言葉で言い表している。

 文章は書き慣れてくると、職人芸に近づいてきます。文章の技量が増すほどに、やさしい言葉で文章を光らせます。それが読者の共感や共鳴を誘い、感動作品を生みだす道になります。

 しかし、書く量は多いけれど、光る文章がない(殆どない)人もいます。なぜでしょうか。それは一つ作品に対する推敲する回数が低いからです。2、3度の推敲では、光る文章どころか、意味不明で首を傾げたくなる文も混在しています。これでは文章上達はさほど望めません。(中級止まりで、上級は難しい)

 文章が上手な人ほど、プロほど、一つ作品にたいして推敲する回数が多く、一字一句もおろそかにしない態度で臨んでいます。推敲の重要さを認識しています。だから、「巧い文章だな」、という光るものが根気で生みだせるのです。
2006年6月にエッセイ教室開講。今回は第70回の教室になりました。来月7月から、8年目に入ります。目下、「エッセイ教室第70回記念誌」を作成中です。 
第六十九回 5月3日(金・祝)参加者16名
テーマ
文章の密度は音読で決まる

 良い文章は密度が高い。詰め過ぎとはまったく違う。むしろ、正反対である。最も良い文章とは、簡素で、平明で、的確である。それには「省略、圧縮、刈り込み」とで成されていく。

 推敲の段階で、作者がセンテンスごとに目を光らせ、無駄な文字の刈り込みが行えば、読み手にも負担が少ない。良いリズムで読み続けられる作品になる。

 技法は「庭園の庭師」を真似るとよい。庭師はまず庭全体を眺めてから、一本ずつ樹の大枝を鋸で切り、形を整え、次は小さな枝葉までも、鋏でていねいに刈り取る。最後は松葉一本でも、不ぞろいを見逃さず、指先でミリ単位で摘み取る。すると、どの樹も形の良い庭木となり、庭全体のなかで調和がとれている。

「文章の庭師」も、この手法で臨むとよい。書き上げた作品は、全体の構成から冗漫な文章は剪定する。次は圧縮と省略を行う。さらには無駄な一文字でも見逃さず、刈り込む。こうすれば、一つひとつの文章には味が出て、全体の中で、どれもが必要不可欠な用語となる。

『省略、圧縮、刈り込み』の最大のコツは音読である。作品の推敲は、ただ黙読だけだと、作者の思い込みで、見逃してしまう。
大きな声で読み上げれば、途中で、かならず「どこか変だな」と思う。突っ掛れば、そこが文章の流が悪いところである。文のつながりが悪かったり、おなじ用語がくり返されたり、語尾が不安定だったり、ときには登場人物の名前ミスすらも見つかる。それらをこまめに直していく。

 作品は数日間、寝かせておいて、改めて音読する。すると、客観的な立場で判断できるから、文章の前後を入れ替えたり、文章の荒さを改善したり、密度の文章にまで磨かれていく。
良い文章の書き方とは、推敲の「音読」である。音読で刈り込むほどに、作品の修正能力が身についてくる。文章の庭師になれば、巧い文章が書ける作者になる。
連休後半の初日ということもあり、出席を懸念していましたが、いつもとほとんど変わらず、16名が参加しました。演習の提出は今回低調で、9名でした。しかし、全員がテーマから外れることなく、書かれている、という講師からのコメントでした。
第六十八回 4月5日(金)参加者17名
テーマ
ストーリーについて

 エッセイとは「人生のある一点」、生き様のなかで強調したい、その一つの出来事を切り取って、短く表現する創作ものです。さしてストーリーがなくても、エッセイは味わい深く、完成度の高い、感動作品が創れます。
 身辺小説とエッセイの境界線は曖昧です。志賀直哉の「城崎にて」は短編小説だ、あるいはエッセイだと意見が分かれています。なぜか。この作品にはほとんどストーリーがないからです。

「この作品は読ませるな」「この作品は面白い」という評価を得る、作品は概ね異色の素材で、筋立てが凝っています。構成(ストーリー)の運びがよい作品で、一気に読ませます。読者が読みだしたら、止められない。「読者を楽しませる、喜ばせる」それが好きだ、という体質が作者に兼ね備えられています。(周りを笑わせるのが生まれながら好き、という演劇人などはそうです)。
エッセイにはまず制限枚数があります。構成(ストーリー)には制約が出てきます。複雑なストーリーに寄りかかると、失敗作に陥りやすくなります。
 エッセイ作品はストーリーよりも、むしろ一つ事柄を深耕し、一つ内容に拘泥して書き進むほうが無難で、成功率は高くなります。井戸を掘る方式のほうが、単純な素材でも「この作品は考えさせられるな」と深い内容になります。
 ただ、こうしたテーマ型のエッセイは、変化が少なく、読者を途中で退屈させ、味気ない作品になるおそれがあります。そこで、読み手をつかんで離さない。ストーリー技法を身につけていくと、全体の構成が上手になり、作品が光ってきます。書き続けることで、その技量が上がってきます。

『ストーリーのコツ 6か条』
@ タイトルは、内容が見えない工夫をしてください。 「夕立の後」
A 書き出しの一行はとくに工夫が必要です。疑問、何が起きるのか、衝撃、と引き込む必要があります。 「彼は震えていた」
B リード文、本文に入っても、底が割れない。(結末がまったく見えない)
C 読者の予想を裏切る、意外性のある心理描写と会話文で運ぶ。
D 唐突な事象が出てくる前に、あえて伏線を張っておく。すると、不自然さが消えます。
E 最後に来て、「どんでん返し」はストーリーの最大のコツです。
 
 今回の演習は「作品の導入部を300字で書く」という難しいものでしたが、先生が提出作品分を読み上げて、一言ずつの講評をされました。二次会は中村さん、奥田さんの復帰で賑やかになり、話が弾みました。
第六十七回 3月1日(金)参加者18名
テーマ
「テーマ」の絞り込みについて

 叙述文が書き慣れていない人は、「これは面白いネタ(素材)だ」と思いついた、着想の段階からすぐ書き出してしまいます。と同時に、着想とテーマとが混同し、その違いがわかっていない。その場合、「どんなテーマで書かれるのですか」と問われると、ストーリーを説明する人が多いのです。テーマとはなにか。それ自体がわかっていないからです。

「娘の結婚が決まった」。それを書こう。この段階はまだ着想です。着想から書き出すとどうなるでしょうか。書いては改め、あらためては書く。また書き直す。試行錯誤の繰り返しで、無駄な労力が多くなります。最悪は途中で、放棄です。できあがりは不統一で、読者に充分に理解されない作品になります。

 テーマとはなにか。どのようにテーマを決めるべきか。作者として、たとえば「娘の結婚の」何を言いたいのか。「私」は何を主張したいのか。この結婚はなにが問題なのか。声を出して言いにくいことは何か。それらを突きつめていくと、最も重要な事柄にたどり着きます。それを取りだせば、テーマです。

 テーマは一言で短く。それが大原則です。最も解りやすいのが、『結婚は人生の墓場だ』。これを考えた人は、結婚式の喜びだけでなく、その後における男女の立場で、結婚生活から人生を突き詰め、深く絞り込んでいった結果、たどり着いた結論です。これがテーマの絞り込みです。
 テーマが決まれば、そこから筆を取る。テーマに対して素材の肉付けをしていけばよいのです。テーマが明瞭なほど、材料を次つぎに注ぎ足しても、ごく自然に作中に吸収されます。そして、テーマがエンディングに書き記されます。

『結婚は人生の墓場だ』。このテーマならば、しっかり絞り込まれていますから、夫婦喧嘩からでも書き出せますし、蜜月の新婚の回想でも、離婚の調停の場でも、どんな素材でも受け付けてくれます。エンディングで、主人公が一言「結婚は人生の墓場だ」と呟けば良いのです。

 書き出す前に、テーマを仮タイトルにするも、コツのひとつです。
 教室の講師、穂高健一さんが災害文学を上梓されました。『小説3・11 海は憎まず』
東北大震災から2年目、3月の出版です。
全国本屋、アマゾンなどネット購入もできます。
(写真をクリックすると拡大します)
第六十六回 2月1日(金)参加者16名
テーマ
描写力について

 エッセイにおいて、描写文は必要で不可欠な技法です。描写文を上手に書くコツは、対象をよく観察し、作者のことば(文字)で写生することです。文字から読者の想像力を刺激し、イメージを作らせることです。
 描写文と、説明文とは対極にあります。
 作者はよく知っている人、物、事象ほど、説明文で簡単に書いてしまう。家内、長男、わが家の愛犬、晩酌、菜の花畑、実家、駅前……、と書かれても、読者はその特徴がわからず、概念から、月並みなイメージをもってしまう。

@ 人物描写 登場する人物をイキイキした印象で描く。そのコツとして、外観と性格と癖とを3つを組み合わせると、人物が立ち上ってきます。
・外観……似顔絵を画くのように、特徴を見出して書いていく。
       眉には斜めの傷跡がある 縞柄の派手な服をきた三十代の女性。
・性格……長所・短所、際立った精神的な特徴などを書く。
       図太い性格だ はにかむ態度 見下した口の利き方をする。
・癖……言動、四肢の動きなど、瞬時の同じくり返しを取り上げる
      緊張すると指をかむ癖がある 話しながらメガネを拭く。

A 心理描写 心の動きや移り変わりを追う手法です。
・ どう感じたのか   (寸前)
・ どう思慮しているのか(いま)
・ どう行動したいのか (これから)
※これら心の流れを丹念に追うほど、心理が深まってきます。

B 情景描写 風景・光景を描くもので、絵を見させるように書くことです。
・ 一つの情景のなかに、多めの名詞を入れる。そして修飾させる
・ 遠景、中景、近景と遠近法を使う。
・ 正面に見えるもの、左と右にあるものも加えると、描写が深まります

@〜Bで、最も大切なことは手垢の付いた文章、使い古された比喩を使わず、作者の観察した目で書くことです。
 
 新入会の山口さんを迎えて、また新しい風が吹き込みました。
来たる70回のために『エッセイ教室70回記念誌』を作るかどうかを話し合い、会員一人一人が関わる、出来ることをやる、ということを決めました。
第六十五回 1月8日(火)参加者17名
テーマ
作品の盛り上がりについて、
 どの作品も、他人に読ませることができる。それには文章力が高まれば、「盛り上がりを作る」技法を会得することです。
 一般的に、エッセイは誰にでも書けそうです。題名をつけて、それに見合ったエピソードを並べる。それだけの作品は低調で、面白みがなく、迫ってくるものがありません。盛り上がりに欠けた作品は、例を出すまでもなく、世のなかに一杯あります。
 盛り上がりの基本は、たとえ素材が小さくても、エピソードを積み重ねながら、『読者が先を知りたい、もっと先を読みたい』と運べば、漸次、盛り上がっていきます。その先、ラストの手前で、一度ゆるませておく(ユーモアなどで)、そして決定的なシーン(ピーク)をもってくることです。それら技法は物書きの裏舞台「職人芸」を盗むことです。
 このテクニックが身につけば、財産になります。作品に外れが少なく、常に読ませる作品が生みだせます。

【盛り上がりをつくる3大要素】
@ 読者には想像できない、先が見えない筋立てとする。(底が割れない)
A 読者の予測と推量が常に裏切られる。(意外性を忍ばせる)
B 最重要なエピソードはラストに置き、説得力を持たせる。(伏線を張る)

この3大要素を具体的にアドバイスしますと、
@ 各エピソードに、疑問形や自問を使えば、読者はあれこれ予測し、「次はどうなるのか」と考えながら作品を追ってくれます。
A 反対意見とか、反論とか、反語とか、それらを織り交ぜていくと、意外性が生まれてきます。
B 伏線とはあとで起こることをさりげなく、前の方で『ほのめかす』、後半にきて「あのことだったのか」と思わせることです。それは「とって付けたような唐突な感じ」を無くしてくれます。

書きやすい内容を楽に書いていると、ピークが作れません。プロの書き手(エッセイスト、作家)は、小さな出来事でも意外性で引っ張り、なにかしら複数の伏線を張る技を持っています。だから、作品の盛り上がりが作れるのです。
 2013年最初の教室です。ここ数回、演習は提出のみでしたが、今回の「意外性」については、先生が一人一人読み上げて、ミニ講評をして下さいました。
二次会は、いつもと同じ居酒屋でしたが、気分は新年会になり、楽しい時間をすごしました。
今年も楽しい教室になりますように。


講師:西原健次 毎月1回開催
場所:新橋「生涯学習センターばるーん」 
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